日常生活からアクティブヘルスを考える

日常生活とアクティブヘルスケア

日常生活からアクティブヘルスを考える

身体による活動とは、日常生活を営むために体を使った一日の動作量を意味している。例えば、歩行や階段の昇降、物を運ぶなどといった基本的な動作から、家事や労働なども含まれている。一方、運動とは、目的を持った動作の反復を意味しており、健康を目的としたウォーキングやジョギングなどの有酸素運動、そしてフィットネスクラブなどで行う筋力トレーニングが思い浮かぶのではないだろうか。

この活動を支えるのがカロリーで表される摂取エネルギーである。食べ物は全てカロリーで表示され、正常な体の機能を維持する目安となっている。日常生活や運動を行うためには、このエネルギーが最も重要な要素の一つと考えられます。なぜなら、自動車のように燃料であるガソリンが無くなるとエンジンが動かないのと同じで、人は食事によって体を動かすエネルギーを日常的に補充しています。つまり体に蓄えられたエネルギーは一般的に活動量が増えると、安静時よりも多く消費されることになり、日々の生活で活動量が多い人はエネルギーを多く消費し、体を動かす動作が少ない人はエネルギー消費量も基本的に少なくなります。

実際、活動量と消費エネルギーは比例することになりますが、多くの人が食に対する欲求、つまり食欲を上手くコントロール出来ているとは言い難いのではないでしょうか。これは、現代社会が抱える豊食による摂取過多が先進国を中心にメタボリックシンドロームや生活習慣病などの健康を損なう問題となっていることからも伺えます。特に日本と言う国には、様々な食品や外食産業の発展による世界各国の料理が稀なほど揃っています。このような状況で、食事を楽しむ際に摂取カロリーを気にしている人はそう多くはいません。結果として、一日にどれだけの量とカロリーを摂取したのか、または、どれほどの身体活動を行ってエネルギーを消費したのか、この両方を個人的に把握することは残念ながら容易なことではありません。

テクノロジーを活用して活動量と食事内容を可視化する

活動量と食事内容を可視化先ずは自分自身の日常的な行動を振り返り、どのような生活パターンを送っているのかを認識することが賢明です。近年ではスマートフォンやスマートウォッチなどのセンサーによって活動量が随時記録されるデバイスが身近な存在となっています。これらの進化し続けているセンサー内臓デバイスによって、自身の活動量を計測することは以前よりも飛躍的に簡単でとなりました。例えば、以前から存在する万歩計と同じく、歩数を自動的に集計し、スマートフォンで確認できるようになっています。食事に関しては、スマートフォンに内蔵されているカメラで撮影すれば、その日に食べた食品が後から確認できます。何を食べたかメモなどで記載する際、明確に記録することは意外と手間となる場合があるので、映像として記録することは非常に簡単で正確と言えます。

このように、日常的な習慣を知ることは、自身の現状を理解するために非常に重要です。第一に、自分を知ることから始めてみる。そこから、改善した方が良いところを見つけて、当たり前と思っている健康と向き合う機会をつくることは、十分に価値があるのではないでしょうか。

カロリーを消費する目的と意味とは

活動量を増やせば、消費カロリーも増えます。つまり、食事で得たエネルギーを燃焼して使い切ることができます。全てを使うことが出来なかったエネルギーはどうなるのでしょうか。それは、脂肪となって体に蓄えられ貯蔵エネルギーとなります。いざという時には、この貯蔵エネルギーである脂肪は非常に有効なのですが、現代ではなかなか「いざ」と言うときが残念ながら滅多にありません。

理想的には、食事で摂取したエネルギーは使い切ることを前提に量を考えるべきなのですが、食品ごとのカロリーは知識が十分でないと摂取カロリーを把握ことは非常に難しいと思います。自分では腹八分目と思っていても、思いのほかにカロリーが高い食品もあるので、個人の感覚は当てにならない可能性があります。

では、活動量を効率よく高める方法を考えてみましょう。最も合理的な方法は、やはり運動にあります。短時間でも効率よく体を動かすことによって、代謝が活発になりカロリーを消費してくれます。運動と言う言葉は、健康と密接な関係があり、健康増進と運動は切り離せない関係となっています。

運動する準備と考え方を整理する

厚生労働省が定める運動習慣とは、週2回、1回30分となっており、これを1年以上続けると運動習慣者となります。習慣化するには、ある程度の時間が必要です。ここで多くのひとが、ギブアップしてしまうことがあります。だれもが一度は経験したことではないでしょうか。特に、運動に慣れていない方やスポーツなどの経験が少ない方に多く見られる傾向があります。やる気と体力のギャップを冷静に見極めなければ、過度な負担は三日坊主に繋がる原因になります。体力に自信のない方、久しぶりに運動を再開する方は、折角のやる気を絶やさないためにも、最初は「楽」なくらいの運動を行う事が適当です。むしろ運動の内容よりも、行動を変えることを優先させ、健康のために動作を増やすことを試みてはいかがでしょうか。この行動を繰り返すことで、行動変容となり習慣化されていきます。例えば、フィットネスクラブへいく事を目標に週に2回は必ず訪れることで、行動変容の始まりとなります。辛いことをするのが前提になると億劫な気持ちになり、フィットネスクラブへ行く事を先延ばしにし、いずれは行くことを止めてしまう理由になります。そうならないように、無理はせず出来る範囲で始めてみましょう。

ひとことで運動と言っても多種多様、健康を目的とした体を動かすことなら何でも運動と言っても過言ではありません。ただ、継続することを前提に注意することもいくつかあります。最も大切なことは、怪我予防です。無理をすると体がついていかず、健康増進のためにもかかわらず体を痛めてしまうことも考えられます。特に過去に受傷した関節などの箇所は、運動を始める時に確認しながら行うことが大切となります。ある動作をすると違和感や痛みが発生する場合は、医師のアドバイスをもらうことをお勧めします。必要に応じて、検査などで現状を確認しておくと、不安が解消され前向きに運動に取り組めます。習慣化するために不安は最小限にしておきたいものです。多くの場合で、運動効果による体調の改善が期待され、違和感などは徐々に解消されるケースが多いのも事実です。調子が悪いという理由で関節などを放置すると将来的に悪化する場合もあるので、前向きに運動を始めてみる価値は十分にあります。

からだは大きな水のタンク

夏の暑い季節になると熱中症がメディアなどで取り上げられることが増えますが、年間を通じて日々の水分補給は健康な体を保つためにとても大切です。ポイントは、少しの量でこまめに水分補給することです。また、身近にお水などを用意しておくと、自然と補給する機会が増えます。

特に、運動前の水分補給は、非常に大切です。大きめのグラス一杯(350ml~500ml)のお水を約2~3時間前に、そして運動20~30分前にグラス一杯(200ml~250ml)の水分補給を行うのが理想的です。清涼飲料水やジュースは、砂糖など炭水化物(糖質)が多く含まれる場合があり、吸収する時間が長くなってしまいます。水分補給は、ミネラルウォーターなどのお水が基本です。脱水症状を予防し、熱中症対策にもなります。運動前だけでなく、一日を通して水分補給は、体の代謝を維持するためにも非常に大切なのでお水を飲む習慣も試してみてください。

運動に適した服装とシューズを用意しましょう

運動に適した服装とシューズは、動きを妨げず動作や関節への不必要なストレスを軽減してくれます。歩き方や走り方には個人差があります。運動によって、関節の動きや動作が改善する効果も期待できます。その際に、手脚の動きが非常に重要となりますので、服装は意外と大切なアイテムとなるでしょう。また、気温の影響も体は受けるので、季節に合わせた服装が快適に運動を行うことを助けてくれます。シューズは、体重を受ける足腰を助ける非常に大切な道具となります。サイズや形が自身の足に合う物を選びましょう。古くなったシューズには、歩き方などの影響が表れます。長い間、使用してすり減った靴底(ソール)のシューズを使い続けると関節や姿勢に悪影響を与える場合があるので、靴には寿命があることを認識しましょう。思い切って買い替えると気分転換にもなり、やる気も出るのではないでしょうか。

まとめ

毎日の食事を少し観察するだけでも、食に関する意識が芽生えます。口にするものは、将来の体をつくると考えてみましょう。運動に対して苦手意識があるひとは、運動を習慣化させることが難しいと考えがちです。それは、事前の準備と自分の状態を知ることで障壁となっているものを理解すれば、解決策も見えてくるのではないでしょうか。楽しむことを前提に、少しずつ始める。そして、少しずつ実感が訪れると、あなたはもう運動習慣者のひとりです。何時からでも始められるのも運動の良い所なので、必要性を考えている間に出来なくなってしまう前に簡単なことから始めてみませんか。その価値は大きなものとなって将来自分に返ってくる投資となるでしょう。

 

《執筆者》
一般財団法人 日本ヘルスケア財団
副理事 竹内陽一
MBA、NATA公認アスレティックトレーナー