見た目では分からない筋肉と年齢の関係

年齢と共に体力の低下を不安に感じるのは、男性も女性もおなじではないでしょうか。現在の医療では老いは止められませんが、そもそも見た目からでは筋力や持久力を測ることは困難です。しかし、日常的な活動量と共に代謝量も増えるので、アクティブな運動習慣は自然と周囲に伝わるのではないでしょうか。年齢を問わず、健康を目的とした運動の継続は、筋肉の質と量を改善してくれる非常に大切なカギとなります。スポーツやレジャーに参加する機会が減ってしまっている方は、特に体力や筋肉量が低下する可能性が高いと考える必要があります。そして生活の質や認知機能の低下を予防するためにも、体と筋肉について考えてみましょう。
 

年齢が影響する筋肉の減少には運動習慣による個人差が発生する


出典:Oxford University Press 2018,「Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis」グラフ和訳は筆者作成
 
筋力は成長期を終えると徐々に減少傾向となる。ただ、日常的な運動や活動量によって減少幅が異なるのがグラフに表されています。最終的に高齢になった時にその差が大きくなり、体の運動機能または生活の質(QOL)に影響することが分かります。(British Geriatrics Society, Oxford University Press, 2018)
 

出典:老年医学会「日本人筋肉量の加齢による特徴」日老医誌2010;47:52―57
 
日本人を対象にした研究(谷本芳美、2010)でも同様に総合的な筋肉の減少を表す結果となっています。この研究では、上肢、体幹部、下肢の筋肉量を測定しており、その中でも特に下肢の筋肉量減少が最も大きいと報告しています。更に減少の幅は女性より男性の方が大きい事が結果として出ています。

いつでも始められるトレーニングとアンチエイジング


筋肉の減少は、多かれ少なかれ加齢によって発生してしまうことが、調査結果によって分かっていただけたと思います。では、筋肉や筋力の減少を遅らせる事を考えてみましょう。予防策として効果的な方法は、減少する前に維持することをお勧めします。早い段階から筋力維持に取り組めば、「きつい」「つらい」といった感覚も少ないと思います。勿論、年齢に関係なく、いつでも始められるのも運動です。現状の体力にあった運動強度で、筋肉を動かすことを考えてみてください。ただ、やる気が強すぎて無理をすると怪我や痛みに繋がり、逆効果となってしまいますのでその点は注意が必要です。更に体を動かすことで筋肉だけでなく、心肺機能にも良い影響をあたえます。循環器系や呼吸器系の活性化で更に健康に貢献するでしょう。つまり、運動習慣には体力、筋力、身体機能の維持に貢献するプラスの要素が多く、年齢を理由に諦めることのない生活が期待できます。

下半身の筋肉を鍛えるのに効果的な方法とトレーニング


年齢と共に筋肉の減少幅が大きい下肢、つまり脚の筋肉を鍛えることは将来の日常生活を豊かに営むために非常に大切です。筋力の低下は歩行能力やバランス機能など高齢になった時に、生活の質を落とす大きな原因となるからです。大腿四頭筋と呼ばれる太ももの筋肉、そして股関節で脚の付け根に位置する殿筋は、下肢の中でも大きな力と動作を生み出す重要な筋肉です。これらの筋肉を動かし鍛えるには椅子から立ち上がったり、階段を上るような動作を必要とします。椅子から立ち上がる際に、太ももやお尻に力が入っているのが意識すればすぐに感じ取ることができると思います。上の階へ移動する際に、のぼり階段が脚の筋肉を使うのに効果的です。エスカレーターやエレベーターを利用する代わりに、上の階へは階段を日常的に使うようにすると自然と脚の筋肉を鍛える事ができます。定期的にフィットネスジムを利用されている方は、スクワットを行うことをお勧めします。ダンベル、バーベル、マシンなどで負荷を与えて下半身を鍛えるトレーニングを行えば、短時間で効果的に下肢の筋肉を鍛える事ができます。理想的にはトレーナーなどのアドバイスを受けたうえで、正しいフォームを確認するとより安全です。我流の動作でスクワットなどを行うと膝や腰に過度の負荷で痛めてしまう可能性がありますので、慣れていない人はすこし注意したほうが良いでしょう。無理をして痛みを抱えてしまうと、結局のところ運動が出来なくなってしまうので、それだけは避けたいところです。更に、正しいマシンの使い方やフォームで行うトレーニングは腰痛予防や改善にもつながるので、前向きに取り組んでみる価値はあります。

筋肉のお手入れにはストレッチが効果的、健康な体には柔軟性も必要

最後に、筋力アップのトレーニングや運動後には、筋肉の柔軟性にも目を向けてみてください。強い筋肉と柔軟な体は、体の動作をより効果的で機能的に働きます。特に、デスクワークで長時間の仕事をした後など、からだがカチカチになって肩こりや腰の張を感じたことがある人は多いと思います。凝り固まった筋肉では、正しい形での動作や運動を困難にし、怪我のリスクを高めてしまいます。運動は時間と場所が必要ですが、ストレッチなど柔軟体操は意外と場所を選びません。日中の休憩時間に体を伸ばして筋肉を緩めてみてください。少しでも良い状態の体を維持することは、日々の取り組みから始まります。

 

《執筆者》
日本ヘルスケア財団
副理事 竹内陽一
MBA、NATA公認アスレティックトレーナー

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