前回は、エグゼクティブにとって、仕事に通じる感性の磨き方について遊びの重要性についてお話をしていただきました。
今回は、如何にして組織と個人に幸福をもたらして、エグゼクティブが現役寿命を延ばしていくための取り組みをお話をしていただきます。
Contents
失敗の原因を多角的に分析し組織の成功へ
Question
次のステージを見据えて常に前向きな姿勢は、これこそエグゼクティブと感心します。でも、過去には失敗された経験もおありでしょうか?
未来だけでなく過去から学ぶことも必要です。過去の成功の原因を考えた時、偶然であったという結論は案外と多いものです。それよりも過去の失敗の原因を考えることが重要で、多角的に多面的に分析していく中に、最終的に組織の成功に結び付く術が隠されています。
例えば、世界一企業となったトヨタの成功要因の一つに、TQC(Total Quality Control)の導入があることは有名な話です。その緒は、組み立てラインのオバチャンの声を聞き取ることから始まりました。作業員の身体の負担を減らし効率をあげ生産性を高めるかについて、現場の声を拾い集めカイゼンしていった結果、今日の組織としての成功に至ったわけです。
人生の充実と組織の活性化というダブル効果をもたらす方法
失敗から学んだ一つの例ですが、私の専門である住宅業界の話です。ベテラン営業マンは一定年齢を超えると使い道のない人と見られ、言葉は悪いですがお払い箱寸前に扱われてしまいます。しかし本来、彼らは一通りの部署を経験し、独自の蓄積とノウハウをもった長年組織に貢献してきた人達です。こういった人物を定年までの数年間、前線から追いやって無難に終えさせてしまってよいのかと感じます。彼らをもう一度、身体からシャキッとさせ、モチベーションをあげ、やる気を出させれば、戦力となり組織の活性化、成功に繋がると考えています。当人の人生も、良い方向に向かうに違いありません。
この背景には過去の苦い失敗があります。前社で私の部署に定年前の男性が配置されてきました。50歳後半で、身体も心も荒んでいる感じで見た目もよくなく、使いようがありませんでした。当時の私は彼に安易な仕事をさせ、せめて給料の数分の一でも回収できればよしという考えでいました。しかし、それは今思えば間違いでした。やはり組織としては給料の何倍もの仕事をさせ、本人にとっても定年までの最後の数年間を心豊かに過ごさせてあげるべきだったと思います。
今となれば、なんとか出来たはずです。まずはアルコールを止めさせて身体を整え、気持ちをあげ、遊びと休養の機会を与えることで立て直せたに違いないと思う今日この頃です。
心、身体、見た目(Looks)の向上が組織と個人の幸福をもたらす
こうした取り組みのためにも、当財団が推奨する「心・身体・見た目」という概念は意義深いと感じています。身体と心と見た目の向上については、まずNEXTエグゼクティブ達が実践し、部下へ広め、パート従業員に至るまで浸透させていくことが理想です。それは組織の成功と同時に、一人一人の従業員の幸福にもつながります。
これにも実例があります。業績が低迷していた某カメラメーカーが、ある時を境に業績改善に成功しました。その理由は、レンズの精度を高めることが出来たからです。レンズはカメラメーカーにとっての心臓部ですが、その高精度のレンズを磨き仕上げているのはパート従業員で、実は彼らが品質管理のキーを握っていたことを会社が認識したからなのです。組織として成功するためには、こういったことに気づき考えていかなければいけません。
エグゼクティブに求められる見た目とは?
Question
重要なことは、心と身体、そして見た目(Looks)とのことですが、エグゼクティブに求められる見た目について、もう少し聞かせてください。
例えば新幹線や飛行機での移動途中は、誰にどう見られているか解りません。また社内でも滅多に行かない別フロアに行った時など否応なく外見のみで評価され、その評価が案外と影響力があったりします。エグゼクティブは、このような状況でも最善かつ最上の自分を見せる工夫が欠かせません。気を緩めてはいけないということです。
私の場合、普段は年齢を感じさせないようキビキビ動きハツラツと見せるよう気をつかっていますが、時にゆったりと余裕をもった動きで自分をプロデュースする場合もあります。計算高いと思われるでしょうが、こうやって使い分ける器用さも必要です。実は、ゆったり動くためには、キビキビ動く以上に筋力が必要になるので、やっぱり筋トレは欠かせませんね。
化粧もエグゼクティブの戦術の一つ
ずばり「見た目」は大切です。鏡で見る自分の顔は左右反転していますが、ZOOMの画面は見えている姿が他人の目から移っている自分そのものです。なので自分をチェックする時はZOOMを起動しています。複数名が参加しているZOOM会議の画面で、人々は結構、自分の顔をみて確認しているものです。やはり明るい魅力的な自分を演出するためには、男性でも例えばシミを隠すための化粧も戦術の一つにすればいいと思います。
ビジネスは心理学、商売は消費者心理学
相手を説得する、人を動かす際には距離感は大切です。ビジネスでは1.8メートル以内が望ましいですが、重要な話は1メートル以内で話すべきです。3.6メートル以上離れてしまうと、人ゴトになってしまうそうです。あるいは、正面、横向き、斜め45度など角度による違い。更に、その時に自分がどう見られているかも関係してきます。
私達のコミュニケーションは、8割~9割はビジュアル=見た目によって左右されます。人間は五感を使って様々な情報を収集しているわけですが、その情報の7割は視覚から得ています。従って、コミュニケーションにおいて「見た目」は一番重要な要素と言うことが出来ます。
ビジュアル・コミュニケーションという考え方
Question
お話を伺っていると、ビジュアルから発するコミュニケーションを大切にということでしょうか?
そうですね。つまり、ビジュアル・コミュニケーションですね。ビジュアルは人の心理に大きく依存します。通常、人の第一印象とは初対面から7秒~90秒以内に決まると言われています。つまり相手に好意をもつかどうかは、ほとんど瞬時に判断されている訳です。しかも、その判断材料の多くは視覚から、すなわち「見た目」なのです。好感の持てる人の話は納得しやすいですが、苦手と感じる人の話は最初から聞きませんよね。日本人は欧米と異なり、プレゼンテーションの教育をまともに受けていません。それは見た瞬間に解ってしまうので、損をしているケースが多いです。
ビジュアル・コミュニケーションの基本は、やはり「自分の心(Mind)、身体(Body)、見た目(Looks)」です。その基本を押さえた上で、内容についてビジュアルツールを使ってわかりやすく伝えていけばよいのです。身体と心を日々健康に保つことが、見た目のよさにも繋がります。ただ、生まれつき見た目の印象が悪い人は残念ながら損をしますね。クライアントの組織にもそういう方が時々おられますが、私はストレートに「何とかしようよ」と言うことにしています(笑)。
色を使ったイメージアップにも気をつかう
以前にカラーアナリストの方から、カラー理論についての話を聞いたことがあります。人間の色の基本は、目、肌、髪で成り立っていること、色が伝える印象は大きく人の心理に影響を及ぼすこと等、興味深い話でした。例えば、米国大統領のネクタイの色。湾岸戦争が勃発するなど戦闘状態にある時は、ブルーでコーディネートすることで、クールさ冷静さをアピールします。大統領選の最中は、赤いネクタイで情熱や意欲を有権者にイメージさせるのです。
人にうまく伝えることでビジネスが成立する。そのビジネスのおかげで組織が活性化する。この好循環を生み出すために、コミュニケーションがあるわけです。この基本的構造が解っていなければ、それなりの組織で長の座に就くことはないでしょう。これからエグゼクティブを目指すNEXTエグゼクティブ世代は、特にビジュアル・コミュニケーションの意義を充分に理解し実践してほしいですね。
エグゼクティブが現役寿命を延ばしていくために
現役のエグゼクティブにとっては、現役寿命を延ばすためにも常に見た目を磨いていかなければなりません。繰り返しになりますが、ベースは身体。まずは身体を動かさない限り、心のリフレッシュも見た目の向上も見込めません。その場限りの張りぼては長続きしないものです。
私自身も生涯、心(Mind)、身体(Body)、見た目(Looks)の三拍子そろったアクティブなヘルスケアに努めていきたいと思っています。
インタビュー後記
現役エグゼクティブのインタビューはいかがでしたか?エグゼクティブのヘルスケアというテーマを超えて、人生、生き方の示唆ともなる興味深いお話は、私自身にも心に響く時間となりました。
当財団では、この松尾理事長とともにアクティブ・ヘルスケアという概念のもと、国民の健康増進と健康長寿延伸に貢献できるよう、これからも精進していく所存です。
<了>