アクティブに仕事をされている皆様であれば、毎日が忙しくて睡眠時間が確保しにくいということはよくあることではないでしょうか。睡眠時間を確保しにくいのであれば、その質はいかがでしょうか。午前中から仕事をこなされ、アクティブに過ごされるためには良質な睡眠を取ることがポイントです。
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良質な睡眠とは?
睡眠時間を計ることは簡単にできても、睡眠の質はなかなかご自身でも分かりにくいのではないでしょうか。今はスマートホンアプリで寝返りや睡眠中の体動を測定することもできる様です。ここではもっと簡単な方法をご紹介します。チェックする方法は、以下の2つの問いに答えるだけです。
①「寝る前より起床時の方が元気になっていますか?」
朝起きた時の方が寝る前より元気になっている。そんな当たり前そうに思えることですが、皆様はいかがでしょうか?そういえば朝の方がしんどいかも、という方もおられるのではないかと思います。この質問の意図は睡眠で体力と気力が回復しているかです。もし回復していない場合は睡眠の質が悪い可能性があります。
②「日中に眠気が襲いませんか?」
集中しないといけない時や運転中に眠気が襲ってくることや、会議の時になるとうつらうつらしてしまうなどはありませんか?日中の眠気は睡眠不良が原因になっている可能性があります。ご飯を食べると眠くなるも程度によってはこの中に入ってきます。もちろん睡眠時間が短くても同じことは当てはまりますが、睡眠時間を確保しているのにこの様なことが当てはまるのであれば質が妨げられている可能性は十分あると考えます。
睡眠を妨げる病気は意外と気がつかない
睡眠の障害となる原因としては様々なものが挙げられます。多くの方が最初にストレスを原因と考えられると思います。このような精神的要因の他にも身体的、環境的要因があります。ここでは治療可能で、しかも睡眠障害の原因として疑わないと分からない疾患についてご説明させて頂きます。
睡眠時無呼吸症候群
平成15年に新幹線の運転士が居眠りをしてしまった事故がありました。睡眠時無呼吸症候群はこの原因疾患であったことから新聞などで読まれた方もおられるのではないでしょうか。この疾患は分かりやすく言えばいびきがひどいために一時的に睡眠中の呼吸が妨げられて、無呼吸となり低酸素となってしまう疾患です。ここで言ういびきはただ音がうるさいではなく呼吸が停まるを意味しています。低酸素というのは心不全や肺炎などで酸素が必要な状況と同じ程度まで血中の酸素飽和度が下がることもあります。就寝中であることからいびきは自覚しにくく、かつ就寝時でないと症状が出ないことから疑って検査を行わないと判明しません。本症候群が判明し、治療を開始したことで日中の眠気がなくなったとおっしゃられる方は大勢おられます。
気管支喘息
気管支喘息というとヒューヒュー・ピーピー・コンコンと症状があるものと思っておられる方は多いことでしょう。実際にはこの様な症状を呈される方は小児には多いのですが、中学・高校生を過ぎるあたりからは症状に現れにくくなります。喘息は深夜から明け方に症状が増悪する日内変動をすること、ダニアレルギーなどのアレルギー素因を持っていると寝具に入ったことで呼吸状態が無症状で悪化することがあります。検査は肺機能検査(スパイロメトリー)を行うことで分かります。
睡眠が妨げられると様々な病気につながる
少々寝なくても大丈夫だよ、眠ければ昼寝するから大丈夫と思われている方も多いのではないでしょうか。睡眠が妨げられると様々な別の病気を引き起こしてくるので注意が必要です。ここでは特に内科疾患と神経疾患についてご説明させて頂きます。
高血圧・不整脈などの循環器疾患
睡眠は交感神経優位の日中から副交感神経へ移る時間帯です。この時間帯に睡眠・休息を十分に確保することができないと交感神経が優位となり血管収縮が過度となって高血圧が生じ、また心拍数が高まり不整脈リスクが上昇します。睡眠時無呼吸症候群では低酸素状態も併発することからさらにそのリスクは上昇し、心筋梗塞へ移行する可能性が上昇すると報告されています。
うつ症状などの神経疾患
睡眠は日中に経験した出来事を脳内で整理するための大切な時間です。このため睡眠が十分に確保できないと脳内の整理ができずに溢れ出します。そうなると途端に頭は思考停止状態に陥り、何をしてもうまくいかない、ぼーっと薄い布が頭を覆った様な感じになる、何もしたくないといった症状が出てきてしまいます。こうなると、できないことが増えてしまい、考えようとしてもうまくいかないからずっと考えてしまう、考えるから寝付けないという悪循環に陥ってしまいます。
睡眠を良質なものとするための工夫
良い睡眠を得るためにはどの様な工夫が良いのでしょうか。まずは自分の生活を見つめ直すことから行ってみませんか。カフェインの入ったコーヒーや紅茶・緑茶などを夕食後に飲まれたりしていないでしょうか。睡眠直前にお風呂に入って体がぽかぽか暖かいまま寝るというのも、できれば体を冷ましてからの方が好ましいです。睡眠直前までスマホなど目からの刺激が入る作業をしていませんか。寝室の環境は適切でしょうか。これらの習慣や環境が睡眠に大きく影響を与えています。
工夫をしても睡眠が改善しないときは
ご自身でできる睡眠を工夫されても改善しない時は医師へ相談されることをお勧めします。ストレスがあるから眠れないだけと考えず、隠れている可能性のある疾患についても相談されることでストレス耐性を身につける一歩となることでしょう。
まとめ
バリバリ現役で仕事をされ、さらにもっと成長し続けたいとお考えの方々へ「良質な睡眠とアクティブヘルスの深い関係」という視点で睡眠の質についてほんの一部ですが考えてみました。いかがだったでしょうか。
執筆者
一般財団法人 日本ヘルスケア財団
副理事長 玉井敬人
医学博士
日本内科学会認定医
日本循環器学会認定循環器専門医